オフィス開業時は節約も大事!資金調達の手段と費用削減のコツ
新しく事業を始めるにはある程度まとまったお金が必要になります。また、オフィスや事務所を設ける際も、やはり資金面が大きな壁となって立ちはだかるでしょう。
開業費用と一口に言っても事業内容などによって必要額は異なるため、まずはオフィスを開業するうえで最低限かかる費用を把握しておくことが大切です。
今回は、オフィスの開業費用と資金の調達方法、費用を抑える方法などについてご紹介します。
オフィス開業にかかる費用とは
オフィスを開業するには、思った以上にお金がかかります。どんな事業を始めるかによって設備投資費用は変わりますが、以下は欠かせない費用といえるでしょう。 ここからは、それぞれの費用について仮定の金額を当てはめながら解説していきます。
物件取得費
物件取得費とは、テナントを借りる際にかかる初期費用(保証金・初回家賃・仲介手数料)のことです。それぞれの詳細については下記の通りです。
保証金
保証金は賃貸契約を結ぶ際、担保として貸主に預ける費用です。初期費用の中で最も金額が大きく、相場は月額賃料6〜12ヵ月分ほどです。
通常、保証金は賃貸契約終了後に借主へ返却される決まりとなっています。しかし、物件によっては「すぐに返却されない」「次の賃借人が決まるまで返却しない」など、借主に不利な条件を設けているケースがあるので注意が必要です。
初回家賃
初回家賃は、契約時に支払う家賃のことです。保証金の次に金額が大きく、当月の日割り分と翌月分の賃料が必要となります。
一般的に「家賃の発生日=内装工事開始日」となるため、たとえ内装工事期間中に無収入であっても、賃料の支払い義務が生じます。しかし、貸主によっては家賃の発生日を入居日にしてくれることもあるので、交渉してみるのも一つの手でしょう。
仲介手数料
最後に、仲介手数料は仲介業者に支払う費用のことで、一般的に賃料1ヵ月分が相場です。
上記を踏まえたうえで、仮定の料金を当てはめて物件取得費を算出してみました。
<条件>※賃料は端数切り捨て、保証金は6ヵ月、初回家賃は1.5ヵ月の金額で計算
東京・千代田区、九段下駅徒歩3分、30坪
賃料50万円(坪単価1万6,000円)
保証金:50×6ヵ月=300万円
初回家賃:50×1.5ヵ月=75万円
仲介手数料:50×1ヵ月=50万円
物件取得費の合計:300万円+75万円+50万円=425万円
内装工事費
オフィスや事務所の内装工事費は、厨房設備や給排水工事の費用がかかる飲食店などの店舗と比較すると若干安くなります。グレードや仕様、業者によっても異なりますが、内装工事費の相場は「10〜30万円/坪」ほどです。
内装工事費の合計:30坪×10万円=300万円
広告・宣伝費用
広告物の制作や情報の掲載など、あらゆる広告・宣伝には費用が発生します。
例えば、広告・宣伝・集客に効果的なツールといえば「Webサイト」ですが、内製するには専門知識が必要になるので荷が勝ちすぎるでしょう。そうなると、サイト制作を外部へ依頼することになりますが、こだわった結果、思ったよりも費用がかかるケースも少なくありません。
Webサイト制作の相場は「20〜30万円」ですが、デザインや機能にこだわると100万円を超えることも…。開業したばかりだと費用を捻出できないことも少なくありません。社内で広告案を考えたり、社員で協力してチラシを配布したりと、外注コストを削減することも重要です。
Webサイト制作の費用:20万円
そのほかの設備・備品の費用
オフィスの設備や備品の中でも、デスクやイス、キャビネットなどの家具類は費用が高くなりがちです。グレードによって金額に差が出やすく、レイアウトや配置込みで一人あたり20〜60万円ほどかかります。
ただし、家電量販店などを利用し、購入から配置まで行えば、一人あたりの単価を下げることは可能です。
このほか、小物備品類の購入費用も必要です。例えば、スタンプ台や朱肉、スタンパーなどはオフィス作業に欠かせない文具です。消耗品費や事務用品費なども含めて、余裕を持って用意しておくと安心です。
家具費用:20万円×10人=200万円
小物備品類・消耗品費など:10万円
そのほかの設備・備品の費用の合計:200万円+10万円=210万円
上記で挙げた「物件取得費」「内装工事費」「広告・宣伝費用」「そのほかの設備・備品の費用」を合計すると、425万円+300万円+20万円+210万円=955万円です。ただし、ここではあくまでも低く見積もっているので、条件次第ではもっと費用がかかります。
オフィス開業では、費用の50%は自己資金がいいとされています。つまり、上記の条件だと最低でも478万円ほどは準備しておくのが望ましいといえるのです。
オフィスの立地や規模、業務内容、従業員数などによって開業費用は変わります。現在決まっていること、決めていることを書き出し、それらを前提として必要な費用を計算してみましょう。
オフィス開業費用の調達方法とは
オフィスの開業費用の半分は自己資金がいいとお伝えしましたが、もう半分はどうすればいいのでしょうか。一般的な借入先は、以下の通りです。
日本政策金融公庫
日本政策金融公庫は、国が運営する機関です。借入の限度額はありますが、融資条件がそこまで厳しくなく、一般の金融機関で重視される「過去の経営実績」がなくても融資を受けられます。会社の将来性や自身の人柄を上手にアピールできる方にはおすすめといえるでしょう。
例えば「新創業融資制度」は、自己資金の最大10倍もの融資を受けることが可能です。保証人や担保がいらないので、経営者が負うリスクを抑えつつ、オフィスの開業を目指せます。もちろん、自己資金ゼロで利用するのは厳しいですが、ある程度の自己資金を用意できる見込みがあれば、審査を受けてみてもいいかもしれませんよ。
民間の金融機関
銀行やノンバンク(※1)から融資を受ける方法もあります。しかし、新規経営者は実績がないケースが多く、しっかりとした事業計画書やある程度の自己資金がなければ融資を断られることも…。
個人事業主のときに実績を積んでおり、その後に法人化した場合はその限りではありませんが、融資のために保証人や担保を求められることもあるので注意が必要です。
民間の金融機関の場合、信頼関係の構築が鍵となります。「黒字経営・毎月の返済能力」を満たせば問題はなく、信頼関係を築けていれば融資の限度額はとくに決まっていません。「事業を拡大したい」「新しいプロジェクトを開始したい」など、大量の資金が必要になる際に力を借りることができれば、これほど心強いものはないでしょう。
※1:銀行以外の金融機関。預金の受け入れがなく、お金を貸すなどの与信業務に特化した金融機関を指す。例)消費者金融会社など
地方自治体の制度融資
地方自治体と地元の金融機関による融資制度もあります。ほかの借入先と比較すると金利が安いですが、手続きに時間がかかるほか、自己資金の2倍までしか融資が受けられません。
開業までの準備期間や自己資金に余裕がある方におすすめの借入先といえます。
オフィス開業費用を抑える方法
費用面の不安から起業に踏み切れない方もいるかもしれませんが、各費用を節約すれば少額資金でも起業は可能です。開業費用を節約したい方は、以下の方法を検討してみてください。
合同会社で起業する
会社といえば「株式会社」をイメージする方が多いですが、「合同会社」という形で起業する方法もあります。株式会社とは異なり、「公証人による定款認証(ていかんにんしょう)が不要」「登録免許税が6万円〜(株式会社は15万円〜)」なので、開業費用を安く抑えることが可能です。
合同会社から株式会社へ変更もできるので、まずは合同会社のことを調べてみるのも起業を叶える有効な手段といえるでしょう。
レンタルオフィスを利用する
貸事務所を借りると、賃料や敷金・礼金、保証金などが必要になります。一等地であればあるほど賃料が高くなるので、費用を考えると妥協せざるを得ないというのが正直なところでしょう。
しかし、レンタルオフィスなら費用を抑えつつ一等地にオフィスを構えることができます。
基本的にオフィススペースは専有、受付や会議室は共用となっており、賃貸面積が最小限で済むので、その分の賃料を節約することが可能です。また、デスクやイス、情報通信機器などがあらかじめ備わっているため、初期費用の負担を軽減できます。
このほか、法人口座の開設ができたり事務所移転が容易だったりと、さまざまな利点がありますよ。
物件取得費を安くする
前述したように、オフィス開業にかかる費用の中で、最も割合を占めるのが「物件取得費」です。とくに保証金は数百万単位となるので、できるだけ抑えておきたいものです。保証金がない、または6ヵ月以下というテナント物件もあるので、物件サイトなどでチェックしてみてください。
ただし、築年数が古かったり保証会社への加入が必須だったりと、条件をつけているケースも少なくありません。そういった点も調べつつ、物件取得費が抑えられる物件を探してみましょう。
費用を抑えてオフィスの開業を目指そう
オフィスの開業費用は、決して安くありません。しかし、融資制度を頼ったり、合同会社で起業したり、レンタルオフィスを活用したりと、工夫次第で費用を抑えられます。
またオフィス開業では、意外と忘れがちな備品類についても事前にリストアップし、費用を把握しておくことをおすすめします。例えば、スタンプ台や朱肉、スタンパーなどのアイテムは書類作業で必ず使うので、開業前に揃えておくのもいいでしょう。
「開業費用の工面に困っている」「できるだけ開業費用を抑えたい」という方は、ぜひ上記を参考にしてみてください。